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無題

萌が外部摂取できないため、内部分泌する事にしました。

身代わり伯爵のシアラン編完結後設定の二次です。
ミレーユとリヒャルトのお話。

長くて、読みにくいかもで申し訳ありません。




シアラン公国にも、ようやく春が訪れている。その証拠に、まだまだ冷たさを残す風とは裏腹に日差しは柔らかさを含み、その日差しが湖をなでている。視線を下に向ければ、溶けかけている雪の間から緑が顔を覗かせている。

 しかし、そんな事を実感する暇も無く、ミレーユは、必死に図書館で本と睡魔を相手に奮闘している。普段なら、本を読み始めると、とたんに眠ってしまう彼女だが、今は必死に本の内容を頭に入れようとしている。戦歴芳しくない彼女が、意識を手放そうとした時、

「ミレーユ様!!眠らないでください!まだ1ページも進んでおりませんよ!」
バシッと、本を机に打つ音と共にルドヴィックの叱責が、ミレーユの意識を引き戻す。
「・・え、また寝てた?」
恐る恐るルドヴィックを見上げる。
「はい。」
溜息混じりに答えられ、惨めさがこみ上げる。
また寝てしまったなんて。
「・・うぅ。・・ごめんなさい。」
素直に謝ってみるが、経験上彼がこの後、口にする言葉が想像できてしまう。
「謝るなら、勉強なさってください。このぐらい公爵令嬢ならば当然知っている事ですよ!」
ミレーユが思ったとおりの言葉が、またも溜息交じりで発せられる。
(もう少し優しく教えてくれてもいいじゃない?)
ルドヴィックの小言に、つい口に出しそうになるが、その言葉を飲み込む。
最近では、定番になってきたやり取りだ。


ミレーユは、前大公との結婚式前夜、慣例として花嫁が祈りを捧げるための塔からリヒャルトらに助けられた。同時に大公が偽者であること、偽者の大公が8年前の政変のときに疫病を隠れ蓑に、王族を暗殺したことが明るみになった。ミレーユは、偽者の大公にかけられた暗示の後遺症で、寝込んでいたため実際に偽大公の処罰には立ち会っていなかった。目が覚め、落ち着いた頃にアンジェリカやリヒャルトが説明してくれた。
ミレーユは、やっと終わったのだとほっとしたが、実際は終わってからの方が忙しい。リヒャルトは、偽大公事件の事後処理、偽大公の在位中に不当な処断をされた者への対応、自分が大公に即位するための準備など、シアランに潜伏していた時よりも数段忙しい。リヒャルトと共にシアランに残ると決めたミレーユは、ルドヴィックによって大公妃としての教育、という名のスパルタにあっていた。


以来、ミレーユは、こうしてシアランの国史や歴代の大公、名だたる貴族達の名前、大公妃としての振舞い方などを叩き込まれる毎日を過ごしている。

「全く。このような方を選ばれるとは、若君は・・・。これなら、もっとふさわしい姫君を迎えていただいた方が・・・。」
今までは、素直に謝っていたミレーユだが、彼女にとって弱点を突かれたうえ、リヒャルトの事まで持ち出されては、黙っていられない。
「リヒャルトは関係ないじゃない!・・・もうっ。わかったわよ!ちゃんと寝ずに勉強するから!!」
ルドヴィックには、騙された前科があるから注意しなければならないが、彼なら本当に自分より大公妃にふさわしい女性を連れてきそうだ。しかも、公爵令嬢という立場であるが、ミレーユ自身、自分が公爵令嬢であることを知らされたのは、つい2年ほど前のことなのだ。
 リヒャルトの隣にいるため、シアランで一緒に暮らすためだと思えば、睡魔の手先だった本とも闘える。



何とか、今日の範囲を終え、ルドヴィックから開放されたミレーユは、少し休憩するために自室に向かった。この後も、作法のレッスンが待っているが、一応病み上がりの彼女のために、あまり無理をさせないようリヒャルトの指示でスケジュールは過密ではない。
自室に入ると、アンジェリカが紅茶の準備をしていた。
「まぁ、ミレーユさま。お疲れ様です。お茶が入りましたから、休憩なさいませ。」
 ミレーユの姿を認めると、アンジェリカは優しく迎えてくれた。ルドヴィックのスパルタから開放された実感がじわじわとこみ上げてくる。
 促されるまま、自室のバルコニーに用意された席について、用意してくれた紅茶を飲むと、紅茶の温かさと一緒に力が抜けていく。
「また、あの嫌味な小姑に何か言われましたの?もし何か言われても気にする事ございませんわ。ミレーユさまに若君を取られて嫉妬しているだけですから。」
「ありがとう。でも、平気よ。別に何も言われてないわ。」
ミレーユは、紅茶を飲みながら答えたが、疲れた表情では全く説得力が無い。
アンジェリカは、もう一度問いただそうとしたとき、ドアがノックされた。
「誰でしょう?見てまいりますから、ミレーユさまはくつろいでいてください。」
てきぱきとドアに駆け寄り、外に出たアンジェリカを見送り、視線をバルコニーの外に移す。そこからは、美しい湖が春の暖かい日差しを受けて水面を揺らしている。
(本当にルドヴィックは、悪くないわ。大公妃として必要な知識と教養を早く身につけなくちゃいけないし。もっと頑張らなきゃ!)
自分にそう言い聞かせながら、湖面を見つめていると、次第に瞼が下がってくる。勉強から開放されて、油断していた。
(まだ、この後作法のレッスンがあるのに・・・まだ・・寝ちゃいけないのに・・。)
頭では理解しているものの、身体は本能に従って、眠りに落ちてしまう。


どれほど寝ていたのか、ミレーユが目を覚ましたときには、中天近くにあった太陽が茜色を帯びて傾き始めていた。
しかも、肩にマントを布団のようにかけられている。ぼんやりしたまま、マントを見つめていると、頭の上から声がした。
「目が覚めましたか?」
 その穏やかな声に導かれて、ミレーユは視線を向ける。最近まともにあっていなかったリヒャルトが微笑んでいた。
「よかった。疲れていたようでしたが、大丈夫ですか?」
「・・うん。平気。」
だんだん意識を取り戻したミレーユは、自分がリヒャルトの肩に頭をもたれかけた状態で眠っていたことに気が付いた。
「うわっ!ご、ごめん。重かったよね。・・・てゆうか、作法のレッスンが!!あぁ・・どうしよう・・・。」
 リヒャルトは、慌てて起き上がろうとするミレーユの腕をつかんで、引き止める。
「その事なら大丈夫ですよ。ルドヴィックには、俺から言っておきましたから。」
やんわりと、椅子に引き戻されながら、ミレーユはリヒャルトを見つめる。
「せっかく、久々にちゃんと会えたんですから、もう少しここにいましょう。」
そういってリヒャルトはミレーユの肩を抱き寄せる。ミレーユはリヒャルトに触れるたびに落ち着かなくなってしまう。アルテマリスにいた頃は、手を繋いでいても平気だったのに、彼を好きだと認識して、触れたいと想うほど触れられるとどうしていいか分からなくなってしまう。
「・・・ぁあ!でも、そろそろ寒くない?部屋に入りましょ。」
つい、リヒャルトの腕から逃れる口実を考えてしまう。自分の思考を読まれないように早口で言うと、そそくさと部屋に向かう。
「・・・そうですね。あなたがあんまり元気だと、病み上がりなのを忘れてしまいますね。」
少し残念そうに、ゆっくり立ち上がって室内に入っていく。
「もしかして、私が寝てる間ずっといたの?」
少し落ち着きを取り戻して、聞いてみる。
「えぇ。気持ちよさそうに眠っていて、かわいかったので。つい。」
微笑みながら、そう言われて、顔が熱くなるのを感じる。相変わらず甘いセリフをさらりという。
「そういう時は、起こしてよね!もうっ!」
「すいませんでした。それより、本当に身体は大丈夫ですか?」
恥かしさを隠すために、少し拗ねながら言ったミレーユに、気遣わしげに言葉をかけながら、リヒャルトは部屋の長椅子に腰掛ける。
「・・へ?ぁあ!もうすっかり体調は戻ったわ。」
隣に座ったミレーユは、偽大公の魔薬の後遺症の事をリヒャルトが、まだ気にかけていると思い、元気に答えた。
「えぇ。それもなんですが。あなたに合わないことを押し付けてしまって、無理をしていませんか?」
リヒャルトから、穏やかな笑顔が消えて、苦い気持ちがこみ上げてくる。側にいて欲しいと強く想っているくせに、慣れないことを彼女に強要してしまったという感情が彼の中に渦巻いている。もし、ミレーユが辛いと言ってアルテマリスに帰ろうとしても、自分は絶対に彼女を離さないと分かっているのに。
「まぁ、あたしには勉強とか不向きよね。でも、やめる気は全くないからっ!とめたって無駄よ?」
リヒャルトが二律背反した気持ちに沈んでいると、ミレーユが明るく答えた。
「絶対にルドヴィックがびっくりするような貴婦人になってやるんだから!フレッドの身代わりの花嫁役がやれたんだから、やれるわよ!」
力強く答えるミレーユにリヒャルトは、フレッドの花嫁を思い出して思わず笑ってしまった。偽大公を捕まえた後、リヒャルトはフレッドからミレーユの身代わりをしていた頃の話を聞いていた。確かにあの花嫁役をこなせたのなら、あれ以上に恥かしいことは無いだろう。
「・・そうですね。」
リヒャルトは微笑を取り戻して、ミレーユを見つめる。
優しい眼差しで見つめられて、ミレーユはまた居心地の悪さを感じてしまう。2人の間に沈黙が訪れ、雰囲気の雲行きが怪しくなる。
「・・・あぁ!そうだ!あたし、ちょっとリヒャルトに相談って言うか、話があるんだけど。」
雰囲気に耐え切れなかったミレーユは、大きな声で話を強引に逸らした。
急に話が変わり、リヒャルトは驚きながらミレーユを見る。ミレーユは、立ち上がって部屋の端にある棚から、青い布張りの箱を持ってくる。
リヒャルトの母である前大公妃の形見のひとつ、首飾りの「海のしずく」だ。リヒャルトがシアランに戻るとき、セシリアがミレーユに託して「海のしずく」はもといたシアランの宮殿に戻ってきた。
「これね、やっぱりセシリアさまにもう一度贈ってもいい?」
 リヒャルトが懐かしく首飾りを見つめていると、ミレーユが話を切り出した。
「リヒャルトが大公になるときに必用だからって、渡されたけどもう大公になるのは決まったじゃない?だったら、もうここにある必要はないかなって。それに、あたしには耳飾りの『月の涙』があるじゃない?だったら、リヒャルトが最初に渡したセシリアさまに返した方がいいかなって思ったんだけど。」
 ミレーユは一気に言って、リヒャルトの反応を見るが、全く反応しない。やはり、前大公妃の形見はシアランの至宝として、ここにあった方がいいのだろうか。
「コンフィールド城でこれをリヒャルトに返したとき、淋しそうだったからセシリアさまに持ってて欲しかったのかなって思ったんだけど、やっぱりやめたほうがいい?」
 リヒャルトはミレーユが、そんな前のことを覚えていて気に掛けていてくれたことに驚き、同時に彼女やさしさに幸せを感じた。
「・・・そんなことを覚えていてくれたんですか。それは、もうあなたのものですから、あなたの思うようにしてください。」
「いいの?」
「ええ。」
リヒャルトは、穏やかにうなずいた。ミレーユの気遣いに思わず頬が緩んでしまう。
「じゃあ、セシリアさまに贈るわね。ありがと・・・って何わらってるのよ!」
「すいません。・・・お礼を言うのは俺の方ですね。気を掛けてもらって、マリーも喜ぶと思います。」
 もう2度と本当の兄妹として接する事はできない、妹を愛称で呼び、彼がアルテマリスで出会い世話になった人や得たものに思いを馳せる。あんなに、アルテマリスでのことは捨ててしまうものだと思い、大切なものを作らないようにしていたつもりなのに。ミレーユが自分を「リヒャルト」と呼ぶたびに、8年間の出来事が全て愛おしく感じる。偽りの経歴に偽りの名前、身分。彼女には嘘ばかりついていたのに、自分を嫌うどころか今でもこうして隣にいてくれて、自分と一緒にシアランで暮らしてくれるという。
「お礼を言われるようなことしてないわよ?」
いぶかしげにミレーユはリヒャルトを見る。
「いいえ。本当に俺はあなたから与えられてばかりです。俺はあなたに奪う事しかしていないのに。」
「そんな事ないわ。私だって、リヒャルトから色々もらってるわよ?」
「そういう、健気なところがかわいくてしょうがない。」
甘い言葉で見つめられて、ミレーユは顔が火照るのを感じる。早くこの空気を換えなければ、また落ち着かなくなると分かっているのに、リヒャルトの熱が宿った瞳を、視線をはずせずに見つめ返してしまう。
リヒャルトが手を伸ばしてミレーユの頬に触れる。ゆっくりと距離を詰めてくる彼を意識するが、自分の姿が彼の鳶色の瞳に映る距離になっても、これからの行動が予想できても、逃げる事ができない。それどころか、続きを促すように目を閉じてしまう。
次いで、唇に温もりが重なる。軽い音を立てて、すぐに離れる気配がしたが、近くで小さな溜息が聞こえた。今度はさっきのように触れるだけではなく、ゆっくりと感触を確かめるように唇を重ねてくる。
もう一度、唇が離れてミレーユは目を開けると至近距離に留まっていたリヒャルトと魔が合う。
「あなたは、家族や故郷から離れても、俺の側にいてくれると誓ってくれた。だから、今度は俺が、どんな事があっても離さない、何があっても必ず守ると誓います。」
 真摯な瞳で、声で、リヒャルトは宣誓する。ミレーユは言葉を選べずにいたが、彼の言葉が胸に染み込むように入ってきて、頷くだけで精一杯だったが、リヒャルトは甘い笑顔で微笑んでいる。ミレーユは自分の過去の恋愛経験の無さを呪った。もう少し、女らしくて、もてていたらこういう時にどんな言葉を言えばいいか、今のこの気持ちをどうやって表せばいいかわかったかもしれないのに。胸の中にとめどなく溢れてくる気持ちひとつひとつを彼に伝えたい。そのすべを知らずに、ただ頷くしかできなかった自分が恨めしくさえ感じる。
 リヒャルトが手を強く握るのを感じて、見上げると相変わらず微笑んでいる彼と視線が合う。しかし、ミレーユが居心地の悪さを感じる空気はいつの間にか消え去っていた。
「ところで、この後の予定は全く無いんですか?」
全く今までと違う方向の話をされて、残念に思いながらも驚いて頷く。
「・・うん、無いわ。作法のレッスンがあったけど、寝ちゃって無くなっちゃたし。」
「じゃあ、今日は一緒に夕食をとりませんか?俺も久しぶりに時間がありますから。」
最近、あまり会えてなかったため、素直に嬉しい。
「ほんとに!?いいの?」
「ええ。今日の仕事は終わりましたから。」
「じゃ、早速伝えに行かなきゃ。」
2人の食事が、いつもどおり別々に用意されないようミレーユは立ち上がる。
リヒャルトも彼女に倣って立ち上がって、ミレーユの喜んでいる姿を眺める。シアランに帰った当初は、失ってしまったものが多くあるこの場所で、こんな風に自分が笑っていられるとは思わなかった。
幼い頃のたくさんの思い出が残るこの場所に、長い時間をかけてゆっくりと思い出を刻んでゆける。急いで、彼女を困らせる必要は無い。そのための時間は、死が2人を別つまであるのだから。



〈END〉


長い間お付き合いありがとうございました。

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☆好きな漫画☆
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『ベルサイユのバラ』
『君と僕。』
『風光る』『海街diary』
『あさきゆめみし』
『天才ファミリーカンパニー』
など

☆好きなラノベ&小説☆
『身代わり伯爵』
『彩雲国物語』
『伯爵と妖精』
『死神姫の再婚』『十二国記』
『銀河英雄伝説』
『嗤う伊右衛門』『魍魎の匣』
など

☆好きなアニメ☆
『マクロスシリーズ』
『夏目友人帳』『とらドラ』
『銀魂』『ヘタリア』
など

主に『身代わり伯爵』シリーズの二次創作を置いています。
よろしければ、どうぞゆっくりしていってくださいね。

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