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手紙 セシリア編


おはようございます。

たぶん、今月最後になるであろう「身代わり伯爵」の二次です。


前回に引き続きセシリアです。

それにしても、タイトルのセンスないですね。
(今回の隠れタイトルは「大人の階段」だけど、それはちょっと・・なんか意味が変わってくるしな。)


こんなですが、お時間がありましたら、〈続きを読む〉からどうぞ。




セシリアはテーブルの上に置かれた手紙を睨む。
すぐに、素直じゃない自分に気づいて、視線を手紙から離す。


その手紙はフレッドから送られたものだった。セシリアの長兄であるジークが睡蓮の宮での茶会の際に渡したのだ。
フレッドは冬にリヒャルトとミレーユを追いかけてシアランに入った。セシリアにとっては、しばらく隊務から離れると挨拶に来たとき以来だった。



『親愛なる王女殿下へ。

ご挨拶に伺った時以来ですね。長く隊を空けてご迷惑をお掛けしています。
殿下は「心配などしていないわ」と仰るかもしれませんが、無事、シアランでの事件は終着しました。
今はまだ事後処理が残っていますが、すぐにアルテマリスに帰れると思います。

フレデリック・ベルンハルトより

                追伸 僕がいなくて淋しいとは思いますが、もう少し我慢してくだい。』


相変わらず、人を馬鹿にした人だと思う。
どれだけ心配したかわかっているのだろうか。
助けになりたい。
でも、何の力も持っていない。
せめて、自分の肩書きが利用できたら。
けれど、この肩書きは偽りのもの。
自分がシアランに行けば、自分の本当の立場が明るみになれば、不都合が生じるかもしれない。
そう。ここを動かない事。それが今、自分にできることだった。
そうと自分に言い聞かせてきたが、実際に便りが来ると駆け付けたくなる。

感情がセシリアの胸でせめぎあっている。

いつまでもうつむいていると、瞳が潤んでしまうようで、セシリアは自分を叱咤して顔を上げる。



突然何の前触れもなく部屋の扉が開く。



驚いて振り向くと、青いマントと帽子を着た金髪の少年がいた。

フレッドだった。


「お久しぶりです。殿下」
「・・・・。」

満面の笑みを浮かべるフレッドとは対照的にセシリアは唖然としてしまう。

「どうなさったんですか?殿下。」
「・・・え!?だって・・・てがみ、まだって・・えぇ??」


セシリアの頭の中では、手紙の内容と現状を一致させる事が出来ずに混乱している。
フレッドが帰ってくるのは、まだ先の事だと当然のように思っていたのだ。

「いやだなぁ。すぐに帰れるって書いたじゃないですか。」
(早すぎるわよ!)

「・・・殿下。寂しかったのは分かりますが、泣かないで下さい。」

フレッドがいつものようにセシリアをからかう。
せっかく抑え込んだ涙が、また溢れそうになってしまう。
セシリアはフレッドの視界から涙を隠すために、腕で顔を庇おうとした。
しかし、フレッドはその腕を取り、そのまま自分の方に引き寄せ、片方の腕をセシリアの背中に回す。

セシリアは視界をフレッドの肩で遮られ、彼の鮮やかな金髪の感触がセシリアの額から伝わってくる。
次いで、セシリアの耳元でフレッドの声がする。

「長くお側を離れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」

フレッドの声に今まで聞いたことのない温もりと苦しげな色がにじんでいる。
その声でセシリアはフレッドの格好に気が付いた。
視界が遮られてはっきりとは見えないが、フレッドは旅装のままだった。しかも、厩や汗の匂いがする。
いつもは宮廷に合わせるために華やかな色の服や香水を男性でも付けている場合が多い。
セシリアはそうしたフレッドしか見たことが無かったが、今目の前にいるフレッドはそうしたものを一切まとわずにいる。

それを理解した瞬間、セシリアの中で今まで自分の中で想っていたフレッドが音を立てて壊れていった。

いつも自分の前では憎たらしいほど完璧な笑顔でいるフレッドが、今は焦りも不安もある一人の男にしか見えない。
けれど、フレッドへの今まで以上に強い想いがセシリアの中に溢れている。

今までよりも強く、フレッドを感じている。


(あぁ。私はきっと―)


そう自覚した途端、セシリアは今自分を包んでいる温かさをもっと感じたくなって、自分からもフレッドの背中に腕を回す。
セシリアの気持ちに応えるように、フレッドの腕にも力がこもる。
フレッドが、また話しかけようとする気配がしたが、セシリアはそれを遮るように言葉を発した。

「心配をしたわ。・・会った時に言う皮肉もたくさん考えたわ。・・・でも、もういい。もういいの。
・・・だって、あなたはここに帰ってきたもの。」

フレッドは少しセシリアから距離を取って様子を伺うと、腕の中で笑っているセシリアがいた。
何度この笑顔を待ち望んだだろう。
はじめは、自分が仕える殿下だから、親友の妹だからという気持ちだったが、シアランに行ってはじめて自分自身がセシリアの笑顔を望んでいたのだと気が付いた。

夢見がちで、落ち着いてはいるが幼さの残ったセシリアではない。今、フレッドの前にいるのはフレッドをフレッドとして見て笑っているセシリアだった。

フレッドはセシリアに微笑み返して腕を解く。

「非礼をお詫びしますね、殿下。・・・あと、僕は心に決めたことがあるんです。」

何の事かという表情のセシリアに、フレッドは少しだけ笑ってから、まだ誰にも告げたことのない決意を言葉にする。

「次は僕の番です。待っていてくださいね。―。」

言葉の最後に、もう一度だけフレッドはセシリアを抱きしめて耳元で囁いた。そして、すぐにセシリアから離れて、挨拶をして部屋から出て行ってしまった。

セシリアはフレッドの抽象的な言葉をしっかりと理解できた。最後の囁かれた言葉が意味することも。

もう退出したフレッドの影を扉に写して、立っていたセシリアだったが思い出したように文机に駆け寄る。
引き出しの中からいつも持ち歩いていた手帳を取り出す。この手帳に今までたくさんの詩や妄想を綴ってきた。
けれど、自分が描いてきたフレッドはどれもフレッドではない。物語の中の王子様のようにどこか現実味のないフレッドを想ってきた自分に気が付いた。フレッドが物語の王子様ではなく、感情も、血も、肉もある一人の人間である事も。

そして、セシリアはその人間としてのフレッドに、今日改めて恋をした。

近づいて初めて気が付いたフレッドの顔、匂い。

昨日までの幼いセシリアと、そんな自分が想いを寄せていたフレッドは、お気に入りの手帳と一緒に煙になって空に吸い込まれていった。



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comments

セシリアが・・・!

こんばんは。
この度は新作の『手紙 セシリア編』を拝読させて頂きました!

今作は、セシリアが大人の女性への一歩を踏み出した様子が本当に素敵でした!感動しました!
一気に最後迄読んじゃいました!

セシリアが乙女日記と決別するなんて・・・!
そしてフレッドの行動が男前過ぎる…!

難しいセシリアを、こうも可愛く描けるあかつきさまは素晴らしいです!
私にはセシリアは難し過ぎます(笑)。
ツンデレって読むのは楽しいけど、いざ描こうとするとツンとデレの微妙なバランスが難しいです。
そういう私はツンデレキャラ好きです(笑)。

話は変わりまして、お願いがあります。
あかつきさまのサイトを、私のサイトからリンクを貼らせて頂きたいのですが、如何でしょうか?
よろしくお願い致します。

Re: セシリアが・・・!


sakuraさま


こんばんは。
読んで頂いてありがとうございます。しかも、こんなに褒めて頂いて嬉しすぎます!

天啓みたいに瞬間的な感覚で大人になる女の子を書きたいのと、ちょっとした私の中の「セシリアブーム」に調子にこいて書き始めたのですが・・何度も挫けそうでした。

もしかしたら、私にとってセシリアは思考がシンクロしやすいキャラクターなのかもしれません。
これが、ミレーユになると・・・・私にはもう手におえません!
考える前に走り出しそうで・・。
理屈でねちねち考える私から見たら、ミレーユのような本能直進型の人は想像が追いつかないです。

でも、キャラの思考とシンクロして想像してっていうのと、その想像を伝わるように表現するのは、かなり種類の違う作業なのでいつも悪戦苦闘です。

なので、こうやって反応を頂くまですごく不安でしたが、sakuraさまに褒めて頂いてアンジェリカの日記みたいな気分です!
(今まさに小鳥と喜びのダンスを踊り狂ってます。)

リンクの件ですが、大歓迎です!
むしろ、こちらからお願いすべきことでした!
私こそ是非sakuraさまのサイトにリンクを貼らせて頂けないでしょうか?

逃亡

こんばんは。

実はうちにツンデレリクエストを頂いておりまして、ネタも浮かばず書けずに放置しておりました。

これを読ませて頂いて、ちょっと身代わり二次界から逃亡したくなりました。

セシリア×フレッド、素晴らしかったです。

わたしには全くない視点でした。

感動しました。

Re: 逃亡


桔梗さま

こんばんは。
読んで頂いてありがとうございます。

個人的な希望で、セシリアとフレッドはくっついて欲しかったので、書いてしまいました。
ただはじめから最後まで、自分のなかで捉えたのセシリアの心の動きを、どう文章にしたら伝わるのかすごく悩みました。

この二次創作が一番私の文章表現力を示しているようで、更新してからちょっと恥かしく感じていました。
特に、桔梗さまはたくさん本を読んでいらっしゃるので、どんな文章に映っているのか気になっていましたが、

>セシリア×フレッド、素晴らしかったです。
>
>わたしには全くない視点でした。
>
>感動しました。


と言っていただいてすごく嬉しいです!!

また、桔梗さまのサイトにも伺わせていただきますね。

リンク

リンクの件、ありがとうございます!
早速、貼らせて頂きたいと思います。
勿論、私の方も大歓迎です!
よろしくお願いします。

Re: リンク

sakuraさま

こちらこそ、ありがとうございます。
どうぞよろしくおねがいします。

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あかつき

Author:あかつき
地域 :兵庫県
血液型:B型

☆好きな漫画☆
『フラワーオブライフ』
『ハチミツとクローバー』
『ベルサイユのバラ』
『君と僕。』
『風光る』『海街diary』
『あさきゆめみし』
『天才ファミリーカンパニー』
など

☆好きなラノベ&小説☆
『身代わり伯爵』
『彩雲国物語』
『伯爵と妖精』
『死神姫の再婚』『十二国記』
『銀河英雄伝説』
『嗤う伊右衛門』『魍魎の匣』
など

☆好きなアニメ☆
『マクロスシリーズ』
『夏目友人帳』『とらドラ』
『銀魂』『ヘタリア』
など

主に『身代わり伯爵』シリーズの二次創作を置いています。
よろしければ、どうぞゆっくりしていってくださいね。

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